ふじみ野市
大井みどり動物病院
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2025/05/05

EPS

被嚢性腹膜硬化症
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 
 
犬の被嚢性腹膜硬化症(Encapsulating Peritoneal Sclerosis, EPS)は、腹膜が異常な膜となり臓器を包み込む、極めてまれな疾患です。獣医師の間でも認知度が低く、当院で複数の獣医師に尋ねたところ、全員が「EPS」という名称自体を知らないと回答しました。それほど珍しい病気です。
 


最近、当院で手術中にEPSが疑われる犬に初めて遭遇しました。文献によると、EPSは避妊手術中に偶然発見されるケースが多いとされています。私も避妊手術中にこの症例に直面し、一瞬驚きましたが、EPSを鑑別診断として第一に考えることができました。

 


異常な膜の存在の他、子宮や卵巣が、本来存在しない膜に包まれ、腹腔内の壁に癒着している状態を認めました。最初は戸惑いましたが、うろ覚えながらEPSの知識が頭に浮かんだことが幸いでした。腹腔内を慎重に観察した結果、一般的な獣医師がこの状況で手術を進めるべきではないと判断し、避妊手術を中止しました。ある外科専門医でさえ、EPS症例の避妊手術経験は4例しかないと知っていたからです。

 


ただし、膜の厚さがそれほど顕著でなかったため、EPS以外の可能性も考慮しました。例えば、先天性奇形や過去の腹膜炎の後遺症なども鑑別診断に挙がります。そのため、高度医療施設での精査を勧めました。

 


獣医師として、どんなにまれな疾患でも対応できるよう、常に学び続ける姿勢が不可欠です。一生に一度しか出会わないかもしれない疾患が、いつ現れるか分かりません。このような準備と心構えが、動物の命を守り、質の高い医療を提供する鍵となります。

 


一般の動物病院に必要な役割の一つとして幅広い知識と専門医に委ねるべきかどうかの判断力が非常に重要であると考えています。

 


EPSは一度経験すれば忘れられない特徴的な所見を伴います。次に遭遇した際は、今回よりも迅速かつ冷静に対応できるでしょう。しかし、EPSを診断する機会は、獣医師人生の中でおそらくあと一度あるかないかです。その時が来ても、今回の経験を活かし、適切に対応できるでしょう。

 
 
 
 
参考文献


MIURA, Konatsu & HARAGUCHI, Tomoya & ODA, Yasutaka & Nishikawa, Shimpei & TANI, Kenji & Shimokawa, Takako & Shimoyama, Yumiko & Itamoto, Kazuhito. (2018). Encapsulating Peritoneal Sclerosis (EPS) in Three Dogs. Japanese Journal of Veterinary Anesthesia & Surgery. 49. 14-19. 10.2327/jjvas.49.14.


 


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