ふじみ野市
大井みどり動物病院
水曜休診 
夏季休業なし
10時〜

2025/04/05

おいしいのも

たまに楽しむ
 
 
 
 

 

 

ふじみ野市の大井みどり動物病院です。

 
 

近年、人では超加工食品が強い依存性を持つことが明らかになっています。超加工食品とは、主に工場で作られた食品で、人工的な材料や添加物が多く含まれています。例えば、お菓子やインスタント食品、化学調味料などが該当します。

 


一般的に、超加工食品には糖分、脂肪、塩分が多く含まれ、これらは脳の報酬系に影響を与え、薬物依存に似た中毒症状を引き起こします。こうした依存は、ドーパミンの働きを中心に、脳内のホルモンや神経伝達物質の変化によって進行すると考えられています。

 


食品依存症の進行には、ホルモンの変化が関与しています。例えば、食欲を促すグレリンの増加や、満腹感を感じさせるレプチンの働きの低下が、過剰な食欲を引き起こします。また、血糖値を調整するインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が進行すると、空腹感が続き、さらに食欲が増します。こうした変化が積み重なることで、食べ過ぎが慢性化し、食品依存症が悪化します。

 


このように、食品依存症は単なる過食とは異なり、脳の働きやホルモンの変化が複雑に関わる慢性の進行性疾患といえます。

 


ところで、先日、うちの犬に「総合栄養食」と書かれたペースト状のおやつを与えてみました。これが気に入ったようで、それ以降、催促するようになりました。このおやつは超加工食品に分類できるでしょう。

 


おそらく、味の素のような旨味成分が多く含まれており、自然界にない栄養の組み合わせが脳の報酬系を刺激しているのだと思います。

 


味の素は毒性試験を行っており、健康に問題はないとされていますが、最新の研究ではその主成分であるグルタミン酸ナトリウムの害が示唆されています。しっかりとした人への長期的な影響はまだ不明です。

 


旨味成分は本来、自然の食材に含まれていますが、それを抽出または合成したものが化学調味料であり、超加工食品に分類されます。両者の化学式が同じであれば「同じ」とみなす意見もありますが、実際には異なった反応を示す可能性があります。

 


自然の食材に含まれる成分と異なり、単体の旨味成分だけを摂取すると、体は異常な反応を示し、報酬系が過剰に刺激されるのだと考えられます。言い換えれば、異常に美味しく感じ、クセになるのです。これにより、より強い刺激を求めるようになり、おいしさの基準が上昇していきます。

 


ちまたでは、「味の素は味音痴になる」と言われることがあるようです。大げさな表現で誤っているかもしれませんが、超加工食品に慣れすぎると、自然な食材の味では物足りなく感じることがあるかもしれません。

 


適量であれば味の素の使用に問題はないでしょうが、どの程度が「適量」かは明確には分かっていません。さらに、味の素の安全性を強調するインフルエンサーには、利益相反がある可能性も考えられます。安全性を強調するものが実は危険だったという例もあるため、注意が必要です。

 


「水も大量に摂れば毒になる」という比喩もありましたが、グルタミン酸ナトリウムに関しては危険性を示唆する論文があるため、水と同列に語るのは適切ではないでしょう。

 


味の素の主成分そのものの毒性よりも、「異常においしい」と感じることでの食べ過ぎが、肥満や健康被害につながる可能性はあります。

 


こうした、合成や抽出による成分の摂取は、百年前にはほとんどありませんでした。工場で生産され、添加物が多く含まれる超加工食品の先駆けはコカ・コーラでしょうか。コカ・コーラも適量なら問題ありませんし、クセになるのは理解できます。

 


味の素だけでなく、塩、砂糖、顆粒だしなどの製品も同様で、一般的な日本人はこうした加工食品に囲まれています。そのおかげで、美味しいものを安価に楽しめますが、加工度や合成度が高くなるほど、健康への悪影響が懸念されます。

 


うちの犬は、加工していない精肉や骨を主に食べているため、その点では健康的です。これらには人工的なおいしさが含まれていません。だからこそ、犬用のペースト状おやつは刺激が強く、脳内のA6やドーパミン受容体の報酬神経を過剰に刺激したのかもしれません。与えすぎれば依存症につながる可能性があります。

 


リスクを避けるには、できるだけ自然な食材を選び、味の素などの化学調味料や、お菓子、ジュース、カップラーメンといった工場製の食品は控えめにするのが良いでしょう。

 


味の素も、ペースト状の犬猫用おやつも、できるだけ避けた方が賢明です。長期的な影響が不明な以上、安全域で考え、依存症のリスクを意識するのが賢明でしょう。

 


なお、ほとんどの食品メーカーは加工食品を取り扱っており、スポンサーへの配慮からこうした情報は広く知られていないのが実情です。

 


ちなみに、そのインフルエンサーは「精製塩と自然塩は同じ」だというような発言もしていました。確かに成分の違いはわずかかもしれませんが、精製塩は加工食品であり、加工されている分不自然で、刺激的な味に感じることがあります。

 


夜中にラーメン(おそらく味の素のような旨み調味料や糖質と脂質が多く含まれている)を無性に食べたくなるのは、こうした理屈で説明がつきます。これは悪習慣として身につきやすく、食べ過ぎ、インスリン抵抗性の上昇、肥満、さらには病気へとつながりやすいのです。ラーメン屋、食品メーカー、ペットのおやつメーカーも、やみつきになるよう巧妙に戦略を立てているのでしょう。

 


とはいえ、美味しいものを楽しむのは人生の幸福感を高める大切な要素です。味の素をふりかけた卵かけご飯が美味しいのも事実ですし、加工食品は保存性や利便性に優れています。夜中のラーメンも、犬猫のペースト状おやつも、その瞬間の満足感は格別ですから、「たまに楽しむ」くらいが良いのかもしれません。

 
 


参考文献

加工食品、特に砂糖、脂肪、塩分を多く含む非常においしい食品を摂取すると、ホルモンや神経生物学的変化が起こります。これらの変化は、依存性行動の発達、そして最終的には依存症につながる可能性があります。
Tarman VI. One size does not fit all: Understanding the five stages of ultra-processed food addiction. J. metab. health. 2024;7(1), a90. https://doi.org/10.4102/jmh.v7i1.90

分析により、MSGは一般に低用量では安全であると考えられていますが、しかし、MSG の高用量および反復曝露は、胎児毒性および催奇形性、肥満、心毒性、肝毒性、腎毒性、神経毒性、内皮機能障害、生殖毒性、脂質の変化、およびグルコース代謝と関連しています。したがって、MSG への慢性曝露は、ヒトの病理学的に重要な意味を持つ可能性があります。
Udom GJ, Abdulyekeen BR, Osakwe MO, Ezejiofor AN, Orish CN, Orish FC, Frazzoli C, Orisakwe OE. Reconsideration of the health effects of monosodium glutamate: from bench to bedside evidence. J Environ Sci Health C Toxicol Carcinog. 2025;43(1):51-81. doi: 10.1080/26896583.2024.2415202. Epub 2024 Oct 22. PMID: 39435965.

1980年代以降、食品システムにおける超加工食品(UPF)の急増です [ 3、4 ]。UPFは自然界には存在せず、脂肪、精製炭水化物(白小麦粉、砂糖など)、塩などを追加することで意図的に非常に美味しくなるように作られています [ 5、6 ]。UPFの例には、ペストリー、キャンディー、包装されたスナック、ファーストフード、砂糖入り飲料などがあります [ 6 ]。厳密な疫学的研究により、UPF は肥満だけでなく、さまざまな身体的健康状態に関係していることが明確に示されています。
LaFata EM, Allison KC, Audrain-McGovern J, Forman EM. Ultra-Processed Food Addiction: A Research Update. Curr Obes Rep. 2024 Jun;13(2):214-223. doi: 10.1007/s13679-024-00569-w. Epub 2024 May 18. PMID: 38760652; PMCID: PMC11150183.

 


 


 受付時間

受付時間 日祝
9:50-12:45
15:50-18:30

水曜休診
夏季休業なし
12月30日から1月3日休診

049-265-1212